「お前……、いい匂いだ」

「えっ!」

私達の周りにいた人達も、慌てて広場から出ていく。

「いい匂い……、よこせ……」

体が震える、足が震えるせいでその場から逃げられない。

「お前の血……、よこせ!!」

狼の一族は、私に飛びかかって来た。

「いやぁぁぁぁ!」

「ミャ〜!」

「猫っ!」

足元を見ると、そこにはさっきの子猫がいた。

そうだ。

まずは逃げなくちゃ!

私は、猫を抱き上げすぐ近くにあった気の棒を片手に持ち、それを狼の一族に投げつける。

「ちっ……」

その隙に私は、森に向かって走り出す。

森の中へと入り、私は森の奥を目指す。

あいつの狙いは私だから、ここは私が何とかしなくちゃ!

子猫を巻き込みたくは無かったけど、この子が居るとすごく安心する。

この安心感は、昔にも何処かで感じた気がする。

だけど、一体どこで?

「見つけた!」

「な、何で!」

私の目の前に、狼の一族の姿があった。

でも、こんなに早く私の所に追いつけるの?

「逃げても無駄だ。お前からいい血の匂いがするからな、何処へ逃げてもすぐに分かる」

「私の血の匂い?」

何で私の血が匂うの?どこも怪我していないのに。

「さて、大人しく私のえさになってもらおうかしら」

狼の一族は、口元を舐めると私にゆっくりと近づいてくる。