「それは、ある夜の出来事でした――」

私は、このお話をお母様から初めて聞かされた日のことを思い出していた。

「ねぇお母様、何で吸血鬼と人間の恋は駄目なの?」

「時の流れが違うのよ、吸血鬼は人間よりも多くの時間を生きる存在。それと、吸血鬼は人間と関係を築こうとはしない」

「なんでなの?」

「吸血鬼は、誇り高き一族なの。それに比べ私達人間は、誇りも何もない存在」

「ふ〜ん、でも私吸血鬼の人達と仲良くなりたい」

「そうね、リーラなら仲良くなれるわ」

「うん!」

その時のお母様が優しく私の頭を撫でてくれた事は覚えてる。

「だからね、リーラ。もし吸血鬼に出会ったら怖がっては駄目よ。もし困っていたら助けてあげてね」

「うん!リーラいい子だもん!絶対に助けるもん!!」

「リーラは、優しいわね」

だけど、その時のお母様の表情はとても寂しげだった。

「吸血鬼は、人間になる為にある薬を盗み出した。だけど、その吸血鬼の兄たちが吸血鬼を連れ戻そうとし、吸血鬼の大切な恋人であった少女を――」

「きゃぁぁぁぁ!」

「な、何!?!」

突然広場の中に女性の悲鳴が響く。