「逃げたぞ!」

「何処へ行きやがった!!」

静寂な夜の森の中に、赤い光が点々とつき始める。

男達の足音は、森の奥へと向かって行く。

「ふっ……」

そして、ある男が森の中を走り抜けていた。

「そう簡単に捕まってたまるかよ」

その者は、高く飛び上がると頭上にある満月を見上げる。

「今日は、満月か……」

やけに大きい満月だな、こういう日には良くない事が起こると聞くが……。

だけど、その者は気にせず森を抜けるため走り続ける。

「あいつに会うまでは、捕まらない」

俺は、あいつと一緒になるんだ。

だから、絶対にあいつらに捕まるわけにはいかない。

森の出口へと辿り着いたとき、あいつらの声は殆ど聞こえなくなっていた。

「ここまで来れば大丈夫だな、後はこの薬を俺が飲めば」

俺は、ポケットの中に入れておいた小さな小瓶を取り出す。

「これを飲めば、俺は人間になれる。吸血鬼(ヴァンパイア)を辞められる」

吸血鬼を辞めて、俺は自由になる。

そして、あいつと暮らすんだ。