起こしてみるけれど、全然起きる気配がなくて。
でも、気持ち良さそうに眠ってる夕咲を見たら、無理に起こすのも悪くなってきた。
「羽紗のこと……好きなのよね」
首より少し下にある彼の頭を優しく撫でてあげる。最近誰かの頭を撫でてあげることが多いような……。
「ん、」
眠そうな声を漏らした夕咲は、私に擦り寄ってきた。羽紗と、重ねてるのかもしれない。
──でも、私がいるのはあと少しだけだから、もう彼が寂しくなることもない。乃唯も彼女は戻ってくるわけだし。
岬には、先にいなくなること……伝えておこう。
仮にも、彼は私のことを好きだと言ってくれる。せっかく過去の話をしてくれた彼を、私が裏切るわけにはいかないもの。
「──羽歌」
カチャリと、扉が開く。
それから視線が合って、彼は小さくため息をついた。
「夕咲になんかされたか?」
夕咲を押し退けてくれる彼に、「何も」と告げる。それから「ありがとう」と体を起こすと、また抱きしめられた。
そっと彼に身を預けると、耳元に唇が寄せられる。



