「……中戻るか」
「乃唯……」
無理せずに、言ってくれればいいのに。でも、もしかすれば、彼は。私を羽紗の代わりにしてるのかもしれない。
甘えられない分、双子の私に甘えてるのかもしれない。
「とりあえず入ろう。外暑いし」
稀沙に促されて、いつもの部屋へ向かう。その途中で梓に充電器持ってたら貸してくれる?と言えば、
「あまってるのあるから貸してあげる~っ」と快く承諾してくれた。
というか、充電器があまってるってなんなんだろう。
「ああ、そういえば羽歌ちゃん。
珍しく夕咲が朝から倉庫に来てるんだけど、たぶん寝てるから起こしてきてもらってもいい?」
「夕咲来てるの?
うん、わかった。起こしてくるわね」
いつもの部屋へ向かう途中で、夕咲の部屋に向かう。コンコンとノックしても、返事はなくて。
おそるおそるドアノブをひねると、カチャッと音を立ててドアが開いた。
「夕咲……、」
そういえば、夕咲の部屋に入るのって初めてかもしれない。ほかのみんなの部屋は、割と入ったりしてたけど。
梓の部屋はとりあえず電子機器が多かったし、乃唯と稀沙はシンプルだったし、岬の部屋には意外にも本が多かった。
夕咲の部屋もシンプルだけれど、モノクロ調ではなくて、ダークブラウンの落ち着いた感じが夕咲らしい。



