「ふふっ、なんで拗ねてるのよ」
体を起こしてベッドに腰掛けた彼に手を伸ばすと、目的にたどり着く前に彼の指と絡められて。
別にただ指を絡めているだけのはずが、なぜか急に恥ずかしくなってきた。柔らかく握ったりして遊ぶ彼に、顔が赤くなっていく。
「なんで照れてんだよ」
「照れてないけど。
でも、なんか気恥ずかしくて……」
「ふーん」
くっと手を引いた彼が、絡めていた私の指先に唇で触れる。その感触が、とてつもなくもどかしくて。
「その顔、やべぇんだけど」
「どんな顔、してる?」
「……甘えた顔してる」
和泉が私を引き寄せて、肩に顎を乗せてくる。甘えてるのは、和泉のほうじゃないの。
「十分、あなたには甘やかしてもらってるわよ」
「……やっぱ、咲乃なんだな」
唐突に出たその名前に、「え、」と小さく漏らせば彼は私の指先に再びキスを落とした。
──左手の薬指。永遠の愛を誓う指輪をはめるその場所にはまるのは、きっと。愛のない、形だけの指輪なんだろう。