いや、まさか。そんなこと、あるわけ……ない、よな?



「お前の、元彼……って」



『俺はね、みんなのこと大好きだよ』



『俺が守りたいのは、心響と。

──あと、ひとつ』



『あと、ひとつ?』



『そ。大好きな、彼女だけ』



『お前って、マジでさらっと恥ずいこと言うよな……』




脳内に蘇る、まだ鮮明な記憶。



視界に入った指先が、緊張のせいなのか微かに震えている気がした。



『──だって、仕方ないでしょ?』



『強がりでわがままだけど、

本当は繊細で脆くて、消えてしまいそうだから。俺が守るって決めてるんだよ』



──羽歌の、元彼は。



「咲、乃……?」



【岬sideend】