「え、和泉……?

うーん、たまに泊まるけど」



俺の〝秘密〟を知ったら、きっと今はついてきてくれてる幹部たちだって、俺から離れていくんだろう。



それをわかってるから、離れないとか、そんな理由じゃねぇけど。でも、自分が最低だということぐらいは自覚してる。



「仲良いな」



「ふふっ、何よ。心配しないで?

羽紗は、和泉のところに泊まったりしてなかったから」



「ん、知ってる」



──恋情ほど、厄介なものはない。だってそうだろ。裏切りは大概、恋情によって起こるんだからな。




「お前にだって、彼氏いたんじゃねぇのか?」



ぴたりと、羽歌が足を止めた。でもそれは一瞬で、何事もなかったかのように「どうして?」と首を傾げた。



「モテるだろ」



「さぁ、どうかしらね……

生憎、私は学校でも性格悪いから」



──羽歌は必ず、この話の時に冷たくなる。まるで避けてるみたいに。性格悪いなんて言ってるけど、羽歌は優しい。



「でも……

私が好きなのは、たったひとりだけよ」



小さくつぶやかれたそれに、誰かが何かを言うことはなく。梓が部屋に顔を覗かせたことで、話の流れは途絶えた。