「渡さねぇよ、誰にも」
彼の腕が腰に回った次の瞬間、
──優しく触れた唇に、目を見開く。
ちょ、人前で何してんの……っ。
「ば、かじゃないの……」
「バカで結構。
こいつ、俺のもんだから譲らねぇよ」
不覚にも、ドキッとした。
……和泉がかっこよくて、困るじゃない。
「ばか……大好きよ」
「矛盾してる」
「素直に受け取りなさいよ……!」
ぎゅうっと、彼に抱きついて。背中に回す手に、輝く指輪があることに泣きそうになりながら。
「──愛してる」
耳元で囁かれたその言葉に、頷く。
──〝愛してる〟って言うのは恥ずかしいから、いつか、私が純白のドレスを纏うことになる日が来れば、言ってあげる。