「なによ。自分が聞いたんじゃない」
「はいはい。
んじゃ、明日の晩飯はお前がオムライス作れよ」
「いいけど……
あなたもオムライス好きよね」
彼がカップを持ってきて、テーブルに置く。それに手を伸ばす前に、ぎゅーっと強く抱きしめられた。
「和泉……?」
どうしたの?
「──おかえり」
包み込むようなその声に、じわりと涙がにじむ。あの時の約束を、彼はちゃんと覚えてくれていて。
「ただいま……っ」
泣きそうな顔で言った私を見て、彼は呆れたように笑う。でも、抱きしめる腕は強いまま、緩まなくて。
「ほんとに帰ってくると思わなかった」
安心したその声に、思わず泣いてしまった。
「泣き虫だな。
ま、もう俺がそばにいてやるから、泣かしたりしねぇけど」
彼の背中に腕を回して、しばらくそうやって泣きながらジッとしていたけれど。
和泉が耳元で優しく「愛してる」と囁いてくれたから、また泣きそうになったのは秘密だ。