「ただいまー」
誰もいない家にそう言って、まるで自分の家のように上がり込む私。ああでも、今日から私の家でもあるのか。
そう思ったら自然と口元が緩む。
「おい羽歌、
俺に荷物持たせてんじゃねぇぞ」
「ごめんごめん」
ありがとう、と荷物を受け取って、またもや当然のようにそれを彼の部屋へ片付けていく私。
彼がどこに何を片付けているのかは、大体把握しているし、荷物もそんなになかったため、あっという間に終わる。
「ふたり暮らししてたマンション売り払うのか?」
「そんなことないと思うわよ。
元々、神無月のマンションだから」
「贅沢だよな……」
「あなたもお金持ちじゃないの」
「まーな。晩飯何がいい?」
私の紅茶と自分の珈琲を淹れながら聞いてくる和泉に、「ビーフシチュー」と答えれば。
「またかよ……」



