「ええ。ほんと、困るでしょう」



「ふふ、仕方ないじゃない。

この子は私がいないと何も出来ないんだから」



「ほんとに、まったく……。

この子のせいで巻き込まれたのに」



「別にいいのよ、そんなこと」



穏やかな声で会話する羽歌。──その、話し相手は。私ならきっと見向きもしてくれなかっただろう相手。

羽歌がここへ運ばれてきてから、ずっとそばで目が覚めるのを待っていた人。



「お母様、たくさん迷惑かけてごめんなさい。

お父様も、昨日来てくれてたんでしょう?さっき、和泉から聞いて驚いたの」



──私たちの、親。




羽歌の言葉にお母様は「お父様も心配してたのよ」とすこし声のトーンを落とすけれど。



「お父様もお母様も、

なんだかんだ私のこと大好きよね」



「当たり前じゃない。だって、」



「──あら、ごめんなさい。

私と〝羽紗〟の間違いね」



はっと、顔を上げる。



視線の先では羽歌が優しく笑っていて、お母様は困ったようにため息をつく。



「そうね……

あなたたち、ふたりとも大切よ」