今度、顔をゆがめたのは佐原のほうで。



「なんで、なんだよ……」



「………」



「あの時だって一方的に避けたのは、俺のほうなのに……!

なんで、俺のこと責めないんだよ!」



「陸……」



「──なんで、嫌いだって突き放さないんだよ!」



声を荒らげた佐原に、梓は近づいて。そして泣きそうな顔で口を開いた。




「嫌いになんて、なれないもん」



「……っ」



「いまの陸が、僕にとって敵だとしても。僕のことを、嫌いだとしても。

〝あの時〟優しくしてくれたのだって、陸だもん。一時的なものだとしても、本当は恨んでたとしても、陸は陸だよ」



──泣きそうな顔で、それでも笑った梓がどうしようもないほど眩しくて。



「ご、めん……あの時、僕だって向き合おうとすればちゃんと陸と向き合えた。

それを選ばなかったのは僕の〝弱さ〟で」



「梓、」



「あの時向き合っていたら、きっと陸をここまで傷つけることなんてなかったよね」