だから、乃唯と出掛けて男たちに囲まれたあの日も、私は彼を置いて帰れなかった。



──いまは、もう。



「私を傷付ければ、

もう後戻り出来なくなる」



咲乃と話し合った後だから、その恐怖も薄れて平気だけど。あの恐怖が蘇る限りは、彼のことが好きだったんだと思う。



「……それで俺がやめると」



「思ってるわけじゃないわよ。

ただ、忠告してるだけ」



「怖いもの知らずだな」




なんとでも、言えばいい。



所詮私は。……私は?



「ま、やめる気はひとつもねぇけどな」



「……そう」



「あと5分ちょっとだ。

先に遊んでても大丈夫だろ」



そう言って、私の首筋に顔をうずめた彼が、私の肌に唇で触れる。不快感しかないけれど、今さらどうしようもない。



──所詮私は、大事な誰かを笑わせてあげられないんだから。