「……これでいい?」



スマホの電源を落として彼に問えば、それを受け取りながら「完璧だ」と目の前の男が笑う。



「ありがとう。

よく〝出来る女〟って言われるの」



「はっ、自意識過剰か?」



「そういう世界だから。

でもあなたも私と同じで、そうやって自分が正しいと思ってるでしょう?」



「否定はしねぇな」



──拉致されてる私が、どうしてこんなに優雅にも彼と話をしているのかと聞かれれば。30分は確実に自分の身が安全だからだ。




佐原 陸。──元、梓の親友。



「ねぇ、どうして私を拉致したの?

拉致したところで助けに来るかは知らないわよ」



「いや、来るだろ」



「あなた、私が心響の女じゃないってわかってるんでしょう?」



「ああ。でも、心響の女の姉貴だろ」



やっぱり知ってたのか。



ということは、わざと私を拉致した可能性がある。──なんのために?