イヤホンをしていてもきっちり声は聞こえたのか、岬が言い返してくるけれど。
それを気にせず、くすくす笑う夕咲と稀沙。
そんな中。
「ふわぁ……おはよう……」
カチャリと扉が開いて、中に入ってきたのは小柄な彼。──日下 梓(くさかあずさ)。
梓は、コンピューターのような電子機器を扱うのが得意で。女顔で小柄だから、とっても可愛い。
「あずちゃん、もうお昼だよ~?」
「ええ、ほんとに……っ」
また寝坊した……と、なんだかショックを受けている梓。でも、目を袖口でこすったあと、はっとしたような顔になる。
「の、乃唯ちゃん……っ!」
ぱたぱたと乃唯に駆け寄って、そのまま怪我してる腕に負担をかけないよう、ぎゅうっと抱きつく。
「おかえりなさいっ、大丈夫……?」
「ああ、大丈夫だよ」
そっか。梓が寝てるうちに、乃唯が帰ってきたからか。──どうやら梓は昔から、乃唯のことが大好きらしい。
恋愛感情とかではなく、ただ乃唯を尊敬してるらしいのだけれど、かわいい梓が乃唯に抱きついたって、特に違和感はなく。