【side羽紗】



「おねーちゃんっ」



「羽歌でいいって、言ったじゃない」



「こっちのほうが慣れてるもんっ」



そう言えば、「そう」と冷たい羽歌。でもいいもんねっ。さっき好きって言ってくれたもん!



──お店を出て、3人で向かうのはわたしと羽歌が一緒に住んでいたマンション。話によると、最近羽歌はここに帰ってないんだって。



わたしも、それを知らなくて神無月のホテルに泊まってたから、帰るのはひさしぶり。




「咲乃も、一緒に来るの?」



「いや、俺は帰るよ。

マンションまでお姫さまを送ったらね」



「むー、お姫さまだって」



身長がすこし高い羽歌を見上げると、羽歌はくすくす笑って「胡散臭いわよね」と咲乃に言った。

ほんとに胡散臭いよ、咲乃。



「ひどいね、羽歌」



「わざとよ、わざと。

ほら、もうついたから大丈夫。わざわざありがとう」



切り替えの早い羽歌がそう言うと、咲乃は「うん、またね」と私たちに手を振って帰っていった。

咲乃と羽歌は、付き合ってた時からサバサバしてこんな感じだった。