「え?」



「〝羽紗のくせに、私のこと気軽に呼ばないでよ。神無月の令嬢は私なんだから、でしゃばらないで〟……って」



「うわー、羽歌ちゃんきっついねー」



オーナーがケラケラと笑うけれど、全然笑えない。というか、確かにそんなことを昔に言った記憶があるような気もする。

羽紗に何か大事なものを壊されて、とても腹が立ってた……とかだったと思う。



「まさか、本気にしたの……?」



言われてみれば、その後ぐらいから羽紗は私のことをお姉ちゃんと呼ぶようになったような……。



「だ、だって……

嫌われたく、なかったんだもん……」




──なんだろう。



「………」



「お、お姉ちゃん……?」



「羽歌で、いいわよ」



「ほんとに……っ!?」



不安そうに私を見上げてくる目の前の生き物がとてつもなく可愛らしい。不安そうなのに、どこか嬉しそうで。

同じ顔なのに、何がこんなにも違うのか。



「そもそも、妹のことなんて簡単には嫌いになれないわよ」