「和泉……?」
至近距離で、名前を呼ぶ。それ以上何も言わせまいとでもいうように、唇をふさがれて。
ほんの少し乱暴なそれに、息があがる。
「っ、ちょ……」
誰かに、見られたら。
そう考えるだけで凍りつきそうになるのに、彼を押し返せない。それどころか。
「和泉……っ」
自分の声が決して嫌がってるように聞こえないのは、私が彼を好きだからだろうか。
「っ、」
少しして唇が離れて、何も言えないまま彼を見つめる。
さっきまであんなに酔ってたくせに、もうケロッとしたような表情で。──逆に、私が酔ったみたいだ。
「……すげぇ俺って情けねぇな」
「何、が……?」
「お前がほかのヤツのこと見てるからって
こんなに嫉妬するなんて思わなかった」
──自分から、手放したのに。
そう言う彼の表情にはひとつも私をからかってる様子がなくて、泣きそうになった。だって、こんなにも。



