「羽歌……って、」



「酔ったんだってさー。

もう寝てるからそっとしといてやれよ」



「………」



葉月さんにたしなめられた岬はすこし表情を歪めただけで何も言わなかった。そして、私の隣に腰掛けると、ちらっと和泉に視線を落とす。



「ズルい人だよな」



「まぁ、ズルいヤツだな」



岬の言葉に賛同したのは珍しくハチさんで。思わず顔を上げると、彼は「昔の話だ」と笑った。




──ふ、と。机の上にスマホを置いてしばらく経っていたことに気がついて、それを手に取る。液晶をつけると、メールが届いていて。



「………」



送り主が羽紗の名前になっていることにため息をつきつつ、メールを開ければ。



『明日の午後から、

咲乃がお姉ちゃんとふたりで会いたいって』



──もっと、ずるい。



和泉より、ずっとずるい人。



何度も何度も私のことを傷つけるくせに、それでも私を引き止めておこうとする彼は、一体私に何を求めているんだろうか。