「それから、羽紗との仲は今と変わらずよ。
滅多にふたりで暮らしてたマンションには帰らなくなったし、和泉のところでよく泊まらせてもらってた」
──そして。
「あなたたちの学校の方が数日夏休みに入るのが早かったから、私はまだ学校のあった日。
羽紗から、関西に行くと連絡があったの」
春休みに彼の元へ行かなかったのは羽紗なりに気をつかったのか、それとも何か企みがあったのか。
それはわからないけれど、ただ「行方不明ってことにしておいて」と言われた。
意味がわからなかったけど、乃唯が和泉をつかって私に連絡してきたとき、ようやくその意味を理解した。
──〝姫が行方不明になった〟
そう思わせることが、目的だったらしい。──でも、ひとつだけ気になることがある。
「乃唯は、あの子の居場所を知ってた……
探すフリをする必要があったことはわかってるけど、でも」
──私が姫の身代わりになる必要って、あった?
「……ほかのチームとか、不良とかに姫が行方不明って知れたら面倒なことになるからだろ」
「でも、おかしいの。
心響に姫がいるのは有名なことだけど、あの子は先代に頼んで送り迎えしてもらってたんでしょう?」
「……そうだな。
羽紗はすげぇ特別に扱われてた」
「しかも心響の倉庫は、あえて周りに何もないところに作られてる。敵がいたらわかるように。
羽紗の顔も名前も隠されてるのに、行方不明になったところで誰が気づくの?」



