乃唯が悩んで出したその決断を知らず、私は咲乃と変わらない日々を過ごしていた。
やるせない気持ちのまま、和泉が寝るまでそばにいてくれて。翌朝起きると、着信がたくさん来ていて。
私は、おそるおそる連絡を返した。
そうすれば、咲乃は「昨日のは誤解だったんだよ」と弁解してくれて。
「俺が好きなのは羽歌だけだよ」と言ってくれたのに。──なのに、咲乃は嘘をついた。
だって、それが嘘だったんだもの。
私に弁解の連絡をしてきたとき、羽紗と既に関係を持っていた咲乃は、心響から追放されていた。
それを知らなかった私は、安心して彼の隣で笑ってた。──そして、少し経ったある日。
「羽歌(うた)……ごめん」
咲乃は、私にそう謝った。事情を聞くところによると家庭の事情で関西に行かなくてはならなくなったらしい。
「ずっと一緒にいるって、言ったじゃない」
「ごめん……ごめんな。
どれだけ離れても、別れてもずっと愛してるよ」
──私は、この言葉を信じていた。
だから、咲乃をちゃんと笑顔で見送って。また会いにいくと、約束した。いつでも戻ってきて、と、そう思っていたのに。



