「っ……」
「泣くなよ」
耳元で聞こえたその声に、私を抱きしめているのは和泉だと気づいた。
御橋の息子として彼も出席していたから、お父様にカードキーでももらって入ってきたんだろう。
「何があった……?
お前が泣くなんて、相当なんだろ」
「っ、咲乃が、」
──羽紗と、キスしてた。
どうしてもそれだけは口にできなくて、ただひたすら涙をこぼす私が泣き止むまで、和泉はずっとそばにいてくれた。
「……すげぇ泣いたな。ほら、水」
いまと同じように、私の面倒を見てくれて。咲乃と羽紗がキスしてたことは言えなかったものの、和泉は私を支えてくれた。
「あり、がと……」
「ん。で?咲乃がどうしたんだよ」
「………」
「言いたくねぇなら、」
「羽紗と、キスしてた」



