──だけど、パーティーの時間が近づいて。お父様に急に呼び出されたと思えば、ようやく咲乃との交際を認めてもらえて。
順調、だったのに。
「ねぇ、羽紗。
この間買ったメイク道具──」
ドレスを着飾り、開いていた妹の部屋をのぞき込んだ私は、そこで言葉を失った。
──な、んで?
「っ……」
「羽歌……!」
呼び止められたけれど、追いかけられることはなかった。ただ、高いヒールで走って足が痛くなっただけ。
「羽歌?あなた急いでどうしたの」
「お母様……なんでもないわ。
羽紗にメイク道具を借りようとしたけれど、中に入れなくて」
「おかしいわね。部屋にいるはずよ。
──でもいいわ、出るのはあなただけなんだから。メイクしてあげるからそこに座りなさい」
言われたとおり、席に座るとお母様がメイクを施してくれた。
──いつの間にか家に来ていたらしい咲乃と、羽紗がキスしてた。あの光景が焼き付いて離れない。だからといって動揺したら、神無月の令嬢失格だ。
泣きそうな心に蓋をして、私はいつものように笑ってみせた。



