「私、もう心響の倉庫に行く気ないの」
「俺はお前の好きにすればいいと思ってるからな。
──でも、ひとつだけいいか」
「うん?」
空港を出て、彼のバイクに乗せてもらおうとすれば、優しく引き寄せられて。
「ん……」
──なんとなく、わかった。
だから先に目を閉じたら、優しく唇が重ねられて。ほんのすこし軽く触れるだけで離れた岬は、私に真剣な表情を向けてくる。
「羽紗と、咲乃とのこと……
俺に、出来る限りで良いから話して欲しい」
「………」
「わがままで悪い。でも、さっきの見て……平常心じゃいられなくなった」
さっきの、って。もしかして、咲乃が私を引き寄せた時のことだろうか。確かに咲乃は慣れたように私を扱っていたけど。
「でも、あれは」
「わかってる。
──でも、咲乃がお前のことまだ好きなら、俺はあいつに勝てる自信がねぇんだよ。何もかも知ってる咲乃には勝てない」
「……そう、ね」



