羽歌が、不安げに俺を見上げる。



「んな顔すんなよ。大丈夫だから」



「……ほんと?」



「じゃなきゃお前に顔向け出来ねーだろ。

安心しろよ。もう、解決したから」



羽歌と付き合ったとき、迷ったけど過去と向き合って乗り越えようと思った。──だって、俺がもし羽歌の立場なら。



昔の恋人といつまでもごたついてたら嫌だろ?



「お疲れ様……ちゃんと聞くわね」




微笑んでるのに、大きな瞳はどこか淡い力強さを秘めてる気がする。──やっぱり、羽歌は強い。



過去の話も、過去を乗り越えた話も、聞くためには覚悟がいる。もちろん、話す方もだけど。



──だからこそ、俺も話すのを躊躇う。別に悪い話じゃねぇのに、まだ胸の中を押しつぶす〝何か〟を受け止められないままで。



「大丈夫、よ」



──俺の表情を見て何かを悟ったのか、そう言って俺の背中に手を回してくれる羽歌に、安心した。



「今日、会ってきたけど……」



「うん」