【side岬】



カチャ、とドアの開く音がして。無意識に小さく息を呑んだ俺を見て、オーナーが小さく笑ってちらりと視線を上げる。



「いらっしゃい、羽歌ちゃん」



「こんにちは」



ふわりと笑った羽歌は俺の隣に腰掛ける。ふぅ、と小さくため息をついてからようやく羽歌に視線を向ければ、ばっちり視線が重なった。



「っ……」



そのまま羽歌がなんとも言えない表情で、まぶたを伏せる。長いまつ毛が震えるから、思わず頬に手を添えて顔を寄せたとき。




「俺いるけど良いの?」



オーナーのこの場を楽しむような声が聞こえて、はっとした。──危なかった。若干理性失ってたな。



「羽歌」



「うん……」



「……泣いたか?」



ほんのすこし目が赤い気がして、尋ねれば羽歌は首を横に振る。──信じてるから、俺は無茶に聞いたりしねぇけど。



「もしなんかあったなら言えよ?

いまお前のことを守る立場なのは俺なんだから」