立ち上がった彼とカフェを出て、車に乗ると助手席に座る。それから、動いた車の中にはひたすら沈黙だけが続いた。



私のせめてもの足掻きが、和泉に送ってもらうことだと、和泉は理解してる。



「罪悪感とか過去とか気にしてたらいつまでも前に進めねぇよ。

過去は前に進むためのステップであって、足枷じゃない。それは頭に入れとけ」



「……うん」



「いまお前は、向き合うために俺を過去にしたんだから。ちゃんとこれからのことと向き合えばいいよ」



「……うん」



頷いたところで、車が止まる。シートベルトを外しても動けない私の背中を押すのは、やっぱり彼の言葉で。




「いってらっしゃい」



ねぇ、和泉。そう言ってくれたってことは、いつか〝おかえり〟って言ってくれるんでしょう?



その時は、私がちゃんと〝ただいま〟って言うから。



──だから、今は。



「いってきます」



笑顔で、彼の元を離れる。



だって私が泣いてたら、和泉が心配するから。だからもし、彼の元に帰ることがあるなら、その時はたくさん泣いてもいわよね。

──おかえりって迎えてくれる、あなたの腕の中で。