「おはよう、羽歌ちゃん」
「お、はよ……」
「羽歌ちゃん面白ぐらい動揺してるね」
動揺するに決まってる。軽く朝ごはんを食べた私と和泉は、彼の車で海に来て。砂浜まで降りてきたところで電話がかかってきた。
──というか、砂がサンダルに入って痛いんだけど。
「もー、稀沙くん。
女の子をいじめちゃダメでしょっ」
未だ私が何も言えない中、そう言ったのは稀沙の隣にいた女の子で。くすっと笑った稀沙が、「ごめんね」と悪びれもなく謝る。
絶対悪いと思ってない。
「柚(ゆず)がどうしても海行きたいって言っててね。
心響で行く予定がないから行けないって言ってたんだけど、今日空いたから連れてきてあげたんだよ」
まさか羽歌ちゃんたちと会うなんて思ってなかった。稀沙がそう言うけれど、本当に偶然私を見つけたらしい。
というか。
「あの、稀沙」
「ん?」
「〝柚さん〟って」
隣にいる子なのは、わかるんだけど。



