行きは稀沙のバイクの後ろに乗せてもらっていたけど、まさか今度は彼の後ろに乗ることになるなんて。



「……あなた、女の子ニガテなんでしょう」



「あ゛?仕方ねぇだろうが」



「羽紗の姉だから、でしょう」



「俺はアイツ以外の女は信用してねーんだよ」



さっさと乗れ。そう言いかけて、彼が途中で口を閉ざした。そしてポンと、シートに触れて顔をしかめた。



「おい、お前まだ時間あるな」




……はい?



「なんで……?」



「なんでって、考えろよ。いまこんなに暑いだろ。炎天下に置きっぱだったからシートが熱いんだよ。

お前、そんなほとんど脚出した状態で座ったら太もも火傷すんぞ」



だから、近くで暇つぶしだ。



そう言って、彼がバイクを押して歩き始める。



行き先は決まっているのか、スタスタと歩く彼の、ほんのすこし後ろを歩きながら。



──あながち悪い人でもないな、と小さく笑った。