「ん、わかってる」



「……ごめんなさい」



視線が、下に落ちる。そんな私を見かねたように、乃唯は「もし」と口を開いた。



「もし、俺が素直に勘違いのことを、言ってたらどうなってただろうな」



「……それは、わからないわ。

あなたと出会ったころ、私は咲乃と付き合っていたし」



──それに。



「私が身代わりの姫としてここにいる間、

岬と付き合う前に言われていたら付き合ってたかもしれない」




──あの子が私の大切な人を奪ったように、羽紗の大切な人を、奪っていたかもしれない。



あの子だって、私にとっては結局大切な妹でしかないのに。



「私は、いまのこと後悔してないわよ」



充電していたスマホを充電器から外して、電源を入れる。



向き合うことを決めたのは、岬のことだけじゃない。



「みんなに、黙ってたことがあるの」



──羽紗のことも、咲乃のことも、いい加減私は向き合わなきゃいけないから。