「つーかさ、

佐原陸ってどっかで聞いたことあるよな」



さらっと会話に入ってきたみーくんを、じっと見つめる。聞いたことある、って。



「──俺と羽歌を狙った不良のトップだ」



静かに、部屋に落とされたその声。威圧のあるそれはいつもの優しい声とは比べ物にならなくて。



「俺らのトップを病院送りにしてくれたあの不良たちのトップか~」



「病院送りの意味間違ってんだろ」



──小さく、息を呑んだ。




乃唯ちゃんの、羽歌ちゃんを狙ったあの不良のトップが、陸なの?

──メンバーのリストアップはしてたけど、ほかにも頼まれてることが多くて、名前まで確認してなかった。



「梓」



優しい声で、羽歌ちゃんに名前を呼ばれる。



「いままで、お疲れ様」



ふわりと、微笑んでくれる羽歌ちゃん。その言葉を聞いて──償いのことも、初恋のことも、嫌われた事実も。



全てから、開放されたような気がした。



【梓sideend】