「……うん」
「無意識に、目で追ってしまって」
「………」
「付き合いたい、とかそんなのじゃないんです。
でも、ただ言いたくなって」
ふるふると、彼女の瞳が揺れる。
いまにも涙がこぼれ落ちそうなのを見て、優しく「ありがとう」と彼女の頭を撫でてあげた。
「く、さかくん……」
僕は、初恋さえまだだから。
誰かを好きになる気持ちは、理解できないけれど。目の前のこの子を見ていたら、勇気を出して言ってくれたんだろうなって思うから。
「その気持ちに応えてあげられなくて、ごめんね」
首を横に振った彼女が、自分のブレザーをぎゅっと握る。
「話、聞いてくれてありがとうございました」
「……うん」
涙を拭って、そして「友だちとしてよろしくお願いします」と笑ったその子を、強いなぁと思った。



