私達も逃げなきゃ!

 母さんと父さんの手を取ろうと手を出したけど、そこにはいなかった。


 (父さん?母さん?……まさか!)


 もみくちゃになりながら人混みの中を逆走して両親の姿を探すと―――


 (な、なにやってんの!?)


 二人はあの通り魔と対峙していた。

 
 通り魔は刀を両手で持って、今にもこっちに突進してきそうだ。
 父さんは母さんを庇うようにして、鞄から護身用のスタンガンを出してる。
 母さんは父さんの後ろでじっとしつつ、通り魔を睨んでる。


 「レウ、先に逃げろ!後から私達も行くから!」


 ど、どういう事?!


 「レウ!早く行って!早……きゃあぁっ」


 母さんの絹を裂くような悲鳴と、飛び散ってこっちまで飛んできた赤い液体に驚き、数秒目を瞑ってしまう。


 瞼の奥の、遠くの方で父さんの喘ぐ声とドスッという鈍い音がした。







 何が起こってるんだろう……?





 恐怖で足がすくみ、動けない。