逃げ場はない。

かといって瞬間移動するには体力が残っていない。

つまり、ここで終わりという事だ。

私の命を奪うであろう車の形をした死神を見据えながら、私は唇を噛み締める。

結局、個人がどんなに頑張ったところで組織には敵わないのだ。

ごめん、小山田君。

これでも私、頑張ったんだよ…。

心の中で、隣に立つ少年に詫びた。

…その時。

「!!!!!?」

轟音を立てて、空中から降ってきた数十台の廃車全てが炎に包まれた!

あるものは爆発し、あるものは燃え尽き、あるものは黒焦げになり。

全て跡形もなく消え去る。

「な…」

念動力でその廃車を操っていた1号でさえも、その光景に目を見張る。

無論私もだ。

私にはこんな能力は備わっていない。








…ただ一人。

私の隣に立つ小山田君だけが、何の表情も浮かべぬまま、その場に平然と立っていた…。