あの時はまさかいきなり翔太にキスをされるなんて思ってもみなかったし、

しかも何よりキスをした瞬間の男子達からの「おおーっ!」とか「ひゅー!」というわけのわからない歓声も、とにかく恥ずかしすぎて。

その上あたしがビックリして顔を真っ赤にしながら固まっていたら、翔太にそのまま抱きしめられてまた男子達の歓声も上がるしで…最悪だった。

後から翔太に何故いきなりあんなことをしたのかと聞けば、クラスの男子達に「生チューが見たい」と言われたからだって。

もー男って生き物は!

あの日はその望みに頷いてしまった翔太にも何だか少しムカついて、喧嘩になってしまった。…まぁ数日後には何とか仲直りはしたけれど。

でも、この男。

今のこの態度を見ていると、あの時のことなんてこれっぽっちも反省していないように見える。っていうかそうに違いない。

あたしはそう思いながら、ぽつりと呟くように言った。


「……キス、とかはそんな…堂々とするものじゃないと思うんだけどな」


しかしそう言うと、その言葉を聞いた翔太が言う。


「え、僕は皆の前でする方がいいな。出来れば全部オープンがいい。世奈ちゃんに手出すなよって忠告できるしね」

「…全部って」

「だから世奈ちゃんもそうなってよ。もっと人前で色んなことしよ?…今のままじゃ全然足りないし」


そう言うと、少し不満そうな顔をするから、あたしはそんな彼の予想以上の言葉に、また顔を真っ赤にしてしまう。

そして、翔太の頭を軽くバシッと叩くと、言った。


「翔太のバカ!知らない!」





【人前でやりたいこと/おまけ⑤】





(えー!世奈ちゃん待ってよー!)
(ついてこないでっ)
(わかった!いっぱい愛してあげるから、こっちおいで!)