【おまけ①】



あたしは「嫌だ」と言ったのに。

兄貴が「行け」って言うから…。

ほんと、強制的、だったから…

あたしは今、健の家の前にいる。


「…~っ」


なかなかチャイムを鳴らせなくて、いつまでもためらうあたし。

わかってる。これを届けなきゃ帰れないこと。


遡ること、数分前。

土曜日の夕方に部屋でくつろぐあたしに、兄貴が突然言った。


「なぁ世奈、暇やろ今」

「え?んー…うん」

「ほなさ、健の家に野菜お裾分けしに行ってくれへん?」

「ええー」

「なぁ頼むって。オカン送ってきたんやけど、大量すぎて二人やったら食べきれへんねん」


…なんて突然言うから、断りたくても断れなくて、結局今に至る。

健とは前に告白されてから、また喋るようにはなったけど、前と雰囲気が違って何か落ち着かないんだよね。

だから出来れば、健のお母さんに渡してからすぐに、帰りたいんだけど。


「…よしっ」


あたしはそう思うと、野菜が入った袋を片手にようやくチャイムを鳴らす。

しかし…


「………あれ?」