『私は体を支えるのがやっとだったのに……男の人って凄いなぁー』

急いで事務所に向かう旭君を追いながらもそんな事を思っていた。

『でも旭君は高校当時、今より20kgは重い私を保健室にお姫様抱っこで運んでくれた人でした……

こんなに細い人なら軽々抱いて運べるよね。

何度も動画で見ていたけれど、私もこんな感じで抱いて貰ったのかな?』

最後に頭に浮かんだ事で”ボン”と顔に熱が集まりだし真っ赤になっているのを自覚する。

『はぁ……全く覚えてないとか……ホント残念……』

関係者以外立ち入りが禁止されている場所に入って行くのはかなり緊張する。

それでも長いコンパスで歩幅の大きな旭君に後れを取らないよう

駆ける様な急ぎ足で付いて行った。

女性を抱きかかえたまま警備の人に事情を説明する旭君

そして社員の休憩室のような場所に入って行き、ソファーに女性を寝かせてから

「店長、呼んでくるから……」

そう言って足早に立ち去った。