旭君と二人で買い出しに行くようになって分かった事は旭君が近所の人たちやバイト先の人たちからとても可愛がられているという事実。

「おはようさん、今日も可愛い彼女と買い出しかい?」

「おはようございます」

「おはよー鈴ばあ、買い出しは正解。

でもこいちゃんは”彼女”じゃなくて”友達”って前にも言ったよね?」

小岩井家のお隣に住んで居る鈴木さんちのおばあちゃんを旭君は小さい頃から鈴ばあと呼んで慕っているらしい。

「アハハーそうだったかね……

その娘(こ)は旭ちゃんの”ガールフレンド”だね。

うん、もう間違えんよ。イヒヒ」

鈴ばあは旭君と私を見掛ける度に必ずそう言って旭君をからかって楽しんでいるように思う。

二人で歩いていると鈴ばあのように勘違いする人も多い……

イチイチ訂正するのも面倒臭い筈なのに真面目な旭君は私の事を
”高校の同級生”だったり、

”友達”だったりと人に寄って使い分けながらも

”この娘は彼女ではない”そこだけはハッキリと皆に伝えていた。

『彼女は友達』

二人の関係性をそのまんま伝えたに過ぎないのに……

旭君の口からこの言葉を聞く度にどんなに近くに居ても”勘違いするな”そう宣告されている気がしてハッとしてしまう。

ざわざわと落ち着きを無くす胸が苦しくて、出来ればもうこの言葉を聞かないで済むようになりたい。

確かに私と旭君は唯の友達に過ぎないのだけれど……

だからこそ皆には私たちの関係を直ぐにでも認知して貰いたい。

私は切にそう願っていた。