「ねえねえっ、蓮」



不意に聞こえた高く甘い声。

桐谷の向こうに見えた女の子。


「ん?」


首を傾げるシルキーアッシュ。

その優しい声に思わず後ずさる。


「今日はどこ行く?」

「どっかのホテルで良くね?」

「ふふっ、うん、いいよー」

「学生の財布に優しいとこで」

「そうだねー、優しいとこでっ」


赤いリップで彩られた唇が楽しそうに笑いかける。

桜色は妖艶に微笑んでいた。


桐谷にすり寄った女の子に応えるように、桐谷の腕が女の子の腰にまわる。

慣れたようなその手つきで、そっと電車に乗っていく。





二人の一連の動作が、スローモーションのように流れていった。