笑顔のヤス。


キョトンとした顔のキン。


「俺のばあさんボケてないけど?」


事情を知らないキンが首を傾げる。


「いいからボケた事にしておけ!殺すぞ!」


……キンも殺される時あるんだ。


「はぁ?」


まぁ、そうなるよね……


2人はカウンターの中に入ると裏から椅子を持ってくる。


そして椅子に座るとヤスがため息交じりに話し始めた。


「今日も暇なのかなぁ…」


「えっ?」


いつも忙しい恭也の店。


暇な時なんてない筈。



「タクミのところに客引っ張られてるんだよ。


おかげで最近じゃあ男の客ばかりでな」


「そんな…」


「それに、ロウとヒロキまでタクミの店で働き始めあがって!


アイツらぶっ殺す!


……でも、恭也さんは全然気にしてないっていうか……


"どこで働こうがアイツらの自由だ"


なんて言ってさぁ。


別に俺は恭也さんが言っている事を否定する訳じゃねぇけど、


タクミの店で働くのはナシだろって……」


悔しそうな顔をするヤス。


その思いは十分にわかる。


「この前……ヒロキとロウに会ったよ。


2人とも此処を辞めた事後悔してた。


なんかノルマがあるみたいでね、


1人ずつ月の目標金額が設定されていて、


それを達成しないとクビにされるんだって。


しかも、その目標金額っていうのがかなり高い設定になってるみたいでね。


みんな引き抜かれて入った人ばかりだから、


今更元のお店に戻る訳にもいかなくて必死みたい」



「バカだな!一生後悔しておけっつーの!


あのタクミの性格知ってただろうに!


それにしても気に入らねぇ!


いくら人気があるホスト達を集めたとはいえ、


此処までウチに影響するとはな!クソっ!」