私がグッと唇を噛み締めると、
『心咲。それはそうと、心咲の家ってどこなの?』
って、春斗が何でもないことのようにサラッと言った。
「え……?」
『俺さ、心咲の家の近くにはいるはずなんだけど……』
「な、んで……」
『だって、今日は心咲に悪いことしたし。なにより、俺が心咲に会いたくて』
春斗が最後に言った言葉に、出かけていた涙も引っ込んだ。
春斗、会いに来てくれたの?
わざわざここまで、私のために?
部屋の時計に目をやると、時刻は午後7時前で。
部活の後なのに……一時間少しかけて、来てくれたんだ……。
「今、どこにいるの……?」
嬉しさのあまり、少しだけ声が震えた。



