いつかすべてを忘れても、きみだけはずっと消えないで。



私はそっと、仁奈さんの顔を盗み見た。


長い睫毛に、大きな瞳。


色が白くて華奢で、赤みを帯びた艶の良い唇。


風になびくふわふわの髪の毛からは、シャンプーの淡い香りがただよっていて。


……春斗と、とてもお似合いだと思った。


まるで、私の存在なんて忘れたみたいに話し込んでいるふたり。


そんなふたりに、イライラと、悔しさと、悲しみと。


たくさんのものが入り混じった感情が湧き上がってくる。


………ねぇ、春斗。


私、ここにいるよ?


もう少しで電車がくるから、帰らなきゃいけないんだよ?


仁奈さんばっかり見てないで、私を見てよ。


私だけを、見てよ。