いつかすべてを忘れても、きみだけはずっと消えないで。



「じゃあ───」


“また明日”


そう言って手を振ろうとしたその時。


「はーくん?はーくんだよね?」


とても甘ったるい声が、耳の中に入り込んできた。


………誰?


不思議に思って声のした方に振り向くと、そこには、この辺りでもトップクラスの頭の良い子が通うと言われている私立高校の制服を身にまとっている女の子がいた。


彼女は、


「やっぱりはーくんだ!」


と嬉しそうに声を弾ませると、春斗に向かって一目散に駆け寄る。


「……仁奈(にな)か?」

「うん、そう!仁奈だよ!よかったぁ。2ヶ月くらい全く会わないからさ、気付いてくれないのかと思った」

「まさか。忘れるわけないよ。仁奈は、何も変わらないな」


彼女と春斗はどうやら知り合いだったみたいで、とても楽しそうに会話に花を咲かせる。