いつかすべてを忘れても、きみだけはずっと消えないで。



「じゃあ次、松岡。自己紹介、お前の番だぞ!」


和田っち先生の声にハッとした私は、あわててその場に立ち上がる。


いつの間にか、順番が私にまわってきてたみたい。


「松岡心咲です。……よろしくお願いします」


私はたった二言、それだけ言うと、静かに自分の席に座った。


窓から入ってくる風が、私の胸元まで伸びた黒髪をサラサラと揺らす。


「……なあ、あいつ。ほら、松岡さん?可愛くね?」

「あ、俺も思った。でもさ、全然笑わねぇし、男嫌いそうじゃね?」

「でもさ、ああいう笑わないクールな子が笑うと、意外にキュンとくるもんなんだよ」


そして窓から入ってきた風と同時に、コソコソと私の噂をする声が聞こえる。