桜がひらひらと舞う中で、愛おしいきみが無邪気に笑う。


26歳を迎えたきみのてのひらには、一冊の古びた日記。


その日記の中には、きみがひとりで抱え込んでいた不安や恐怖、そして、いくつもの涙の跡が記されていたね。


あれから、もう10年が経ったけど。


高校生だった俺には大切な人がいて、幸せな日々は毎日続くんだと、そう思ってた。


「ねぇ、春斗?」


昔のことをふと思い出していると、俺の名前を呼ぶ大好きなきみ。


「なに?心咲」


俺が微笑みながら聞き返すと、彼女はふわりと笑いながら、視線をまっすぐ前に向けた。


「……あの子も、もうこんなにも大きくなったんだね」


しみじみと呟かれたその言葉につられて、俺も彼女と同じように前を見る。