お母さんがいつも私をそっと見守っていてくれたことも、お父さんが私と同じ症例の人を見つけようといろんな病院を調べて回ってくれていたことも。
私は、分かってたの。
お母さんが、お父さんが。
私を心から愛して、何よりも大切に想ってくれていたことを。
……なのに。
「分かってたんだけどね……っ、どうしても我慢できなくなっちゃって。何かを、誰かを。忘れちゃうのがつらい……っ。私が私じゃなくなっていくのが、すごく怖かったんだ……っ」
私が私じゃなくなって、春斗に捨てられたら。
仁奈ちゃんや蒼くんが、私から離れていったら。
お父さんやお母さん、お姉ちゃんが、“心咲なんて私たちの家族じゃない”って、そう言い始めたら。
私は、今度こそ本当に立ち直れない。
ひとりきりの世界を想像すればするほど、息もできないほどに苦しくなる。



