いつかすべてを忘れても、きみだけはずっと消えないで。



今、お母さんが私のせいで傷ついてるということが。


……きっと、お父さんも全部知ってる。


だって私たちふたりを見つめる視線が、とても心配そうに揺らいでいるから。


「ねぇ、お父さん、お母さん……」


私がお父さんとお母さんの顔を交互に見ながらそう言うと、お父さんはすぐに、


「なんだ?」


と言ってくれた。


それから数秒たってお母さんも、


「……なに、心咲?」


って、優しく微笑んでくれる。


でも、そのお母さんの笑顔は私の好きな笑顔じゃなくて。


「……話が、あるの」


蚊の鳴くような声だったけど、ふたりにはちゃんと届いていたみたい。


お母さんは料理をしていた手を止め、お父さんの座っているソファへと向かい、そっと隣に座った。