いつかすべてを忘れても、きみだけはずっと消えないで。



それからどれくらい時間が経ったのだろう。


「……き、……みさき……」


耳元で、低い声が聞こえる。


その声に誘われるようにゆっくり目を開けると……


「……わっ」


私の目の前には、春斗の顔があった。


春斗は私に向かって少し微笑むと、


「おはよう。やっと目覚めたかぁ」


って私の顔から自分の顔を離す。


ベッドから起き上がってベッドの端に腰かけると、春斗も私の真似をするように隣に腰かけた。


……きっと、私があんなメールしたから、きてくれたんだよね。


しばらくお互い何も口にせず、黙っている時間が続く。


2、3分が経った時、私の左手が春斗の右手と重なった。


びっくりして春斗を見上げると、春斗はまっすぐ前を向いたままで。


「……なぁ、心咲」

「……ん?」

「今日、おばさんから聞いたよ。俺のこと、忘れたんだって?」


春斗の横顔が、私の瞳に映る。


そっか……。


お母さん、春斗にそのこと伝えたんだね。