その時、私の頭の片隅に誰かの笑顔が浮かんだ。
優しくて、心が安らぐような笑顔。
あれは……。
「……っ」
私はガタッとイスから立ち上がり、自分の部屋を目指して2階にかけ上がる。
「心咲!?」
お母さんの慌てる声も無視して、私は部屋の扉を乱暴に開けた。
そしてすぐ横の壁に飾られている写真を見る。
「や、っぱり……」
頭の片隅に浮かんだ笑顔は、この男の子のもの。
私の瞳から、ぽろぽろと涙がこぼれ落ちる。
だって、だって……。
「春斗……っ」
この男の子は、私がさっきまで忘れていた男の子は。
私の大好きな春斗なんだから。
「……んで……なんでよ……っ」
春斗のことを忘れてしまった自分が情けなくて、ムカついて。



